大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)1274号 判決 1968年2月17日

原告 岡田和好

右訴訟代理人弁護士 金田稔

右訴訟復代理人弁護士 赤松進

被告 池田京太郎

右訴訟代理人弁護士 徳矢卓史

同 徳矢典子

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

(原告)

1、被告は原告に対し別紙目録第一記載の建物を収去して同目録第二記載の土地を明渡せ。

2、訴訟費用は被告の負担とする。

3、仮執行の宣言

(被告)

主文同旨

第二主張

一  原告の第一次的請求原因

(一)  別紙目録第二記載の土地(以下本件土地という)は原告の所有である。

(二)  被告は右土地上に別紙目録第一記載の建物(以下本件建物という)を建築所有している。

(三)  よって本件土地の所有権に基き被告に対し本件建物の収去土地明渡しを求める。

二  原告の予備的請求原因

(一)  本件土地につき被告との間に使用貸借契約の存在することを慮り原告は昭和三五年一〇月三一日付内容証明郵便を以て被告に対し右使用貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右書面はその頃被告に到達した。

(二)  よって原告は被告に対し原状回復を求めるため本訴に及ぶ。

三  被告の答弁

(一)  第一次的請求原因事実は認める。

(二)  予備的請求原因事実中原告主張の書面の到達したことは認めるが、その余の事実を争う。

四  被告の抗弁

(一)  被告は昭和二二年一二月頃原告の懇請により本件土地の約四〇〇メートル東南に位する被告所有の田三四七平方メートル(三畝半)を原告に耕作させる代償として原告の申出により本件土地を建物所有の目的で使用することを認められたものである。

(二)  本件土地は湿地帯に存し米が六斗しかとれないのに前記被告の所有田は九斗ないし一石の収穫があったものである。

(三)  被告は本件土地の引渡しを受けてからこれに盛土して宅地化し本件建物を建築したものである。

五  被告の抗弁に対する原告の答弁

被告の抗弁(一)は認める。

六  原告の再抗弁

被告主張の土地交換使用契約は昭昭三三年一二月下旬合意解除され原告は被告の土地を返還したに拘らず被告は本件土地の返還に応じないものである。

七  原告の再抗弁に対する被告の答弁

原告主張の合意解除の事実を否認する。食糧事情が好転し原告において前記原告の田を耕作する必要がなくなったといって、右田を返還してきたので、被告は適正な地代を支払うことを申出たが未だに地代額がきまらないので支払っていないものである。

第三証拠≪省略≫

理由

原告主張の第一次的請求原因および被告の抗弁(一)の事実は争いがない。

そこで本件土地交換使用契約が合意解除されたかにつき考察する。

≪証拠省略≫によると、本件土地は被告の居宅の西隣にあったので、被告は昭和二二年一二月頃本件土地を借りてその居宅を建て増したいと考え、原告に賃借方を申入れたところ、当時は食糧難の時代で原告はいわゆる農家ではあったがここから収穫していた米が飯米の足しになっていたので、本件土地の東南約四〇〇米で原告方にも近く収穫量も多い被告の所有田を耕作させてくれるならば本件土地を被告に貸してもよいということで、その頃本件交換使用契約が成立したものであることが認められる。それで被告は通常の賃料を支払っていないが、それに充分見合う所の被告の田の用益を原告に許したのであるから、被告の本件土地使用の権原は賃貸借であり、したがってまた借地法の適用があるものと解するを相当とする。

そして前示証拠によると、原告は食糧事情も好転したので、昭和三三年一二月頃被告から交換的に借り受けていた田を被告に返還し、本件土地の返還を求めたが、被告は建物が存在しているので引続き賃借を要請したが賃料その他の条件につき合意に到らず今日に及んでいることが認められる。

本件土地交換使用の性格が右説示のように建物の所有を目的とする借地契約と解すべきものとすれば、原告が対価として使用収益してきた田を被告に返還したからといって被告は本件土地の借地権を喪失するものではない。被告としては原告に対し適正な賃料を支払う義務はあるが、原告は賃料の支払を求めないで直に本件土地の返還を求めることは許されない。

以上の次第で原告の予備的請求原因も理由のないことは明らかであるから、原告の請求を棄却することとし、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 庄田秀麿)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例